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薬剤師は街の科学者
『薬局の薬剤師』と聞くと「処方箋通りに、薬を調剤して、渡してくれる人」というイメージが長い間あったと思います。
薬剤師は「ただ、薬の数を数えるだけ」の仕事をしている人と思っている方は、いまだに相当数いらっしゃることと思います。
確かに、昔はそのような仕事しかしていなかった薬剤師も多かったことは事実です。

薬剤師は地味な職業で、薬剤師自身も外に向けてアピールすることが苦手。
医者や看護師のように、TVドラマの主人公になることもありません。

でも、実は薬剤師としての職能を活かし、とても専門的な事もしているんです。
そんな、患者さんにはあまり知られていない薬剤師の仕事ぶりや、薬剤師との上手な付き合い方をご紹介していきたいと思います。

今までずっとコラムを書いてくださっていた荒浪相談役から、コラム欄をバトンタッチされ、身の引き締まる思いの薬剤師Aです。
尊敬する荒浪相談役の格調高いコラムの品格を汚さないように、また違う視点からお話をさせていただければ幸いです。

さて、題名になった『薬剤師は街の科学者』という言葉は、2010年長野で開催された第43回日本薬剤師会学術大会で、毛利衛氏が特別記念講演で話された言葉です。

宇宙飛行士で、日本科学未来館館長の毛利衛氏は「宇宙から見る生命のつながり」と題しての講演で「薬剤師は、街の科学者と言われるが、事実に基づき物事を理解する科学的な考え方は大切である」と述べられました。

『薬剤師は街の科学者』という毛利氏の言葉は、それ以来、私の心に重く長く留まることになりました。

私は、きちんと科学的に考えて仕事をしているのだろうか?
勘に頼ったり、経験だけで仕事をしていないだろうか?
では、実際にどのような事をしたらいいのだろうか?

しばらくたってから、ようやく私なりの答えがでました。

それは、整形外科の処方箋をたくさん受ける薬局で働くことになり、そこで何度も遭遇するある事がきっかけとなったのです。
続く
『第3回 子ども薬剤師体験』 ~~~今年もまた開催しました~~~
去年に続き、8月3日(土)『島田中央薬局 おくすりフェア 第3回 子ども薬剤師体験』が開催されました。
今回は、小学生全学年と中学生が対象です。第1部:小学1~4年生グループと第2部:小学5~中学生グループの2グループに分けて、2部制での開催になりました。各6名の定員でしたが、多くの応募があり、できるだけ多くのお子さんに体験してほしかったので、小学1~4年生の枠を広げて9名となり、計15名での体験となりました。
それでも、以前、参加されたお子さんはお断りすることになってしまったことは、残念でした。もう一度、参加してみたいと申し込みしてくださったお子さん、ありがとう。前回の体験が楽しかったので再度応募してくれたんだろうなと思うと、胸が痛みました。本当にごめんなさい。
また、今回特筆すべきは、中央薬局で当薬局に掲示されている前回の写真をご覧になった方が、お孫さんに体験させてみたいとおっしゃって、申し込まれたことです。
夏休みを利用して、横浜市や静岡市から参加して下さったお子さんが3名いらっしゃいました。
まず、第1部:小学1~4年生グループの1部9名が14:00からスタート。学年を考慮して、9名を3グループに分けての体験となりました。
まずは、白衣を着てから、本格的手指洗浄。1年生は、手指洗浄の後ろ姿もかわいらしい。
次に薬剤師の役割について、スライドによる説明がありました。みんな真剣に耳を傾けてくれました。
調剤は、軟膏の混合、シロップの混合、散剤の混合など、学年によって難易度を変えてあります。
電子天秤でプロペトを測る1年生グループ。プロペト(白色ワセリン)単品だけですが、ベタベタしたプロペトを小さい軟膏つぼに入れるのは、なかなかむずかしい。でも、がんばりましたね。
小学2年生グループのシロップの調剤。
表面張力の説明後、実際に白いシロップ(カルピス)と赤いシロップ(イチゴシロップ)を測り、混合しました。メートルグラスを目の高さに持ち上げ、シロップがへこんだ部分で測るように、との指示を守って、みんな上手にシロップ剤を作りました。
同じく小学2年生グループの軟膏(プロペト単剤)調剤。
小学3、4年生の軟膏の混合。プロペトと、食紅で色を付けた赤いプロペトを軟膏ヘラで混ぜ合わせるのですが、すぐにコツをつかんで上手に混合できました。
次は服薬指導。薬局のスタッフが患者に扮して、実際の投薬台の前に座っての服薬指導をしました。
その順番を待っている間、調剤室では 『クスリを正しく使おう 薬局クイズ』 をしました。例えば、こんな問題です。
足がいたかったので、おばあちゃんの使っている痛み止めのシップをもらって貼ったのは、正しいか、まちがっているか?(もちろんダメですよね。他の人に出たクスリは、その人に合わせてお医者さんが出しているからです。例えば、喘息を持っている人が痛み止めのシップを貼ると喘息の発作がでてしまい、救急車で運ばれることもあります)
薬剤師は、お医者さんと、クスリのことで相談することがあるか?(あります。薬剤師はクスリを渡すだけでなく、その人の体の様子に合わせて、クスリの量を減らしたり、また違うクスリに変えた方がいい場合は、お医者さんに相談することがよくあります。それによって、悪い作用が出るのを防ぐことができます)
みんな、かなりの正解率でした。また、自分の思ったことをどんどん発言してくれて、とても頼もしかったです。クスリへの理解を深めてくれたことと思います。
さて、最後は第1部のみんなで記念撮影。
次に、第2部:小学5~中学生グループが15:30からスタート。第1部グループとは、体験の内容の難易度を一部変えてあります。小学5年生の軟膏混合。
同じく、小学5年生のシロップ混合。メニスカスも良く理解して、上手にシロップを作りました。
中学生の体験者の方には、一段とレベルを上げてマンツーマンでの体験をしてもらいました。
服薬指導の様子。みんな、とても落ち着いて、見事に薬剤師の役割を果たしていました。
服薬指導の順番を待つ間、調剤室では、第1部グループと同じように、『クスリを正しく使おう 薬局クイズ』をしました。問題も少し難しいものにレベルアップしてあります。一生懸命考えて答えてくれる姿に、クイズを作った甲斐があったと思いました。
最後に、相談役からみなさんに修了証書が授与されました。
みんなで記念撮影。みんなよくがんばりました。
最後に書いてもらったアンケート結果も、好評でした。以下、抜粋です。
★くすりをつくるのが、すごくたのしかった。またしたい、またつくりたいなとおもった(6歳)
★くすりのしゅるい、ぬりぐすりやのみぐすりを作ったことが楽しかったです。また、さんかしたいです(7歳)
★薬を作るのはとても大変でした。でも作るのは、とても楽しかったです、薬剤師さんのやっていることはすごいなと思いました(9歳)
★今日、はじめて薬剤師の体験をして、こんなにたくさんのたいへんな仕事をやっていてたいへんそうだなと思いました。しょうらい、やってみようかなと思いました(10歳)
などなど、みなさんの書いてくださった感想に、スタッフ一同感動しました。
はなみずき薬局グループの3薬局(はなみずき薬局・元島田薬局・島田中央薬局)では、第1回、第2回、第3回の 『子ども薬剤師体験』 の写真を掲示してあります。ぜひご覧ください。
『子ども薬剤師体験』 は来年夏も実施の予定です。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(8)
~~~~~プラザキサの場合 その1~~~~~
これは、かなり気をもんだ例です。
数年前のことです。
久しぶりに来局された80代の女性Eさんは、私にとって初めて投薬を担当する患者さんでした。
その年、脳梗塞を発症後、プラザキサカプセル110mgx2cpが処方されていましたが、今までは他薬局でもらっていたとのことで、それまでの服薬状況は不明でした。
当薬局には久しぶりの来局なので、問診を兼ねていろいろと質問をしていくと、プラザキサをしっかり服用していないことが判明しました。
Eさんは、ご自分の唇の皮がむけるのはプラザキサの副作用のせいだと思っていて、本来1日2回服用すべきプラザキサを、自己判断で1日1回あるいは2日に1回に減らして服用していたのです。
口唇の荒れは軟膏の塗布でよくなり、また皮膚科での検査でも「特に問題はない」と言われていて、かつ担当医にも「口唇の荒れはプラザキサが原因ではないし、脳梗塞が再発しないように指示通り1日2回服用するように」と厳しく言われている(つまり担当医もEさんがプラザキサをきちんと服用していないことは知っている)にもかかわらず、「自分の口唇の荒れはこの薬のせいだ、この薬は嫌い」とのことで、回数を減らして服用しているのでした。
プラザキサは、とても注意して服用しなければいけない薬で、2011年3月14日の発売時から2011年8月11日までの間に、重篤な出血性の副作用が81例報告され、因果関係が否定できないとされる死亡例が5例報告されています。
特に、腎機能値の低下ある場合は、プラザキサの量を減量あるいは服用中止しなくてはいけない、服用する時には十分な注意が必要な薬なのです。
そこで、Eさんに血液検査の結果をがあるか聞いてみました。Eさんは、偶然にも1か月前の血液検査の結果を持っていたので、さっそく腎機能値を計算してみました。
CRE:1.0 eGFR:40 CCr:37.4(ml/min)
シスタチンC精密測定でのeGFR推算値:44
CCr:37.4(ml/min)は、中等度の腎機能障害 (CCr30~50ml/min)にあたり、プラザキサ110mgx2cpは添付文書の用法・用量通りで問題ありませんが、ただし慎重投与となっています。
コンプライアンスが悪い現在、出血傾向が今はなくても、しっかり飲むようになったら反対に出血の可能性が出てくるかもしれない。
でも、飲まなければ、脳卒中や塞栓症の可能性が高くなる。
なので、以下のことをくどいほど伝えました。
① 担当医も言っているように、自己判断でプラザキサの飲む回数を減らさないこと。担当医の指示通り服用すること
② 1日2cp服用することで鼻出血・歯肉出血・皮下出血などの出血傾向がでてくるかもしれないが、その時はすぐに担当医に連絡し、受診すること
③ 口唇の皮がむけるのがひどくなれば、再度皮膚科を受診すること
④ この薬は腎機能に中止しながら使う薬なので、血液検査をしたらこちらにも持参してくれるように(腎機能が悪化していないかのチェックのため)
そして、次の来局時には出血も梗塞・塞栓もなく、無事に来てくれるようにと祈りました。
その後、何回か来局され、そのたびに出血傾向は認められず、梗塞・塞栓の再発もなかったので、少しは安心していました。
しかし、担当医からも、きちんと飲まないといけないと、厳しく言われているにもかかわらず、相変わらずコンプライアンスは悪いことが多いようでした。
その後、Eさんの来局は数回だけで終わってしまい、以降のフォローはできないままでした。
続く
『第2回 子ども薬剤師体験』~~~子供たちの可能性に驚く(2)~~~
子ども薬剤師体験のアンケート結果です。
①今回の子ども薬剤師体験は楽しかったですか
『とても楽しかった』 8人
『まあまあ楽しかった』 0人
『あまり楽しくなかった』 0人
②薬剤師がどのような仕事をしているか、わかりましたか
『とてもよくわかった』 8人
『まあまあわかった』 0人
『あまりわからなかった』 0人
③薬剤師になりたいと思いましたか、あるいは薬剤師という職業に興味がわきましたか
『とても興味を持った』 8人
『少し興味を持った』 0人
『興味はない』 0人
④また同様のイベントがあれば参加したいですか
『ぜひ参加したい』 8人
『参加はしない』 0人
以下は、感想です。
感想1) 薬が、どのようにやっきょくやにやって来るのかが、わかりました。(10歳)
感想2) 機会があったら、将来薬ざい師になってみるのもいいかも、と思った。(11歳)
感想3) いろいろとわからないしつ問とか、教えてもらいながらできたので、うれしかったです。今日一日ありがとうございました。(11歳)
感想4) 薬ざいしになってみたいと、初めから思ってたけど、これをきっかけにもっと興味を持てました。ありがとうございました。(12歳)
感想5) なんこうを混ぜるのが思ったよりむずかしかったですが、良い経験になりました。ありがとうございました。(12歳)
感想6) 薬剤師のすごさがよくわかりました。大変そうですが、やってみたいと思いました。とても良い機会となりました。ありがとうございました‼(12歳)
感想7) 薬剤師が、実際どのような仕事をしているか知らなかったので、楽しかったです‼ ぜひ、薬剤師になれるよう、勉強がんばります‼ ありがとうございました。(13歳)
感想8) とても貴重な体験ができました。薬剤師も将来の道の一つに入れたいです。ありがとうございました。(13歳)
全員が、薬剤師体験を楽しんでくれた様子がわかるアンケート結果に、私たちスタッフも大変うれしかったです。
また、薬剤師になりたいとはっきりと書いてくれた子どもさんも数人いて、頼もしい限りです。将来、薬学部に入ったり、薬剤師になったら、ぜひそのことをこちらにも知らせてほしいものです。
もし、薬剤師になったきっかけが、この『子ども薬剤師体験』であったなんてことがあれば、うれしいですね。
また、2019年8月には、『第3回 子ども薬剤師体験』を開催する予定です。
(現在、募集要項は未定です)
『第2回 子ども薬剤師体験』~~~子供たちの可能性に驚く(1)~~~
8月に続き、11月10日(土)『島田中央薬局 おくすりフェア 第2回 子ども薬剤師体験』が開催されました。
今回の対象は、小学5、6年生と中学生。
定員をオーバーして多数の応募があり、抽選となってしまいました。
選にもれてしまった子どもさんたち、本当にごめんなさい。来年の夏休みも、子ども薬剤師体験を開催する予定なので、またぜひ応募してください。
今回、子ども薬剤師を体験したのは小学生4人、中学生4人の計8人。全員、科学好きで、中学生の中には、すでに将来の職業として薬剤師を希望されているお子さんもいました。
白衣を着た姿は、すでに新人薬剤師か、薬学部の学生のようです。
まずは、本格的な手指洗浄から。
今回の子ども薬剤師体験は、小学生チームと中学生チームに分かれての体験となりました。
そして、各チームとも、軟膏の混合と水剤の混合の2種類に挑戦してもらいました。
小学5、6年生チームの軟膏混合の様子はこちら。
中学生チームの様子。
薬学部の実習生でも、軟膏を軟膏ツボに入れるのはなかなか大変なのですが、子ども薬剤師の皆さんは、とても上手でした。
水剤混合。
まずは、メニスカスの説明から始まりましたが、さすが科学好きの皆さん。すぐに理解して、シロップを測ってくれました。
実際に、模擬の処方せんを作り、処方せん通りに調剤してもらいました。
水剤は、セキストップ(イチゴシロップ)、ハナトマール(カルピス)、タントル(水)で作った3種類。
セキストップ、ハナトマール、タントルの中から、処方せん通りに間違えずに、セキストップとハナトマールの2種類を選択してもらうのですが、全員が正しいものを選択しました。
この時に、薬を間違えて選択してしまうことの怖さを説明。過去にも、いろいろな薬局で薬を間違えて調剤してしまい、健康被害が出たこともあることを話しました。
そのために、薬剤師がどのように注意して調剤・投薬をするかも詳しく説明しました。
次は服薬指導。薬局のスタッフが患者に扮して、実際の投薬台の前に座ります。
以下が、投薬の実際です。
薬の取扱説明書(添付文書)を見ながら
① 処方せんと取扱説明書を見て、薬の使い方が正しいか確認
② 患者さんの名前をフルネームで呼んで、着席してもらう
③ 今日はどのような病気で受診したのか聞き、メモを取る
④ 既往症の有無
⑤ おくすり手帳を確認して、一緒に飲んではいけない薬がないか確認
⑥ 薬の飲み方を説明
⑦ 質問があるか聞く
⑧ 心を込めて「お大事にしてください」と言って終わる
みんな、とても落ち着いて、見事に薬剤師の役割を果たしていました。
社長からみなさんに修了証書が授与されました。
最後にみんなで記念撮影。
充実感でいっぱいのいい笑顔ですね。
みなさんに書いてもらったアンケートの結果と、第2部の「お薬講座・なんでかしん」については次回に。
『子ども薬剤師体験』
~~~子供たちに教えられる(2)~~~
さて、実は企画した私たち自身にも良い影響があったことは、思ってもみなかった収穫でした。
しかも、それは整理すると、4つにもなりました。
まず一番目は、子どもたちがキラキラした目で新しいことに挑戦する姿を見て、私たちも小学生のころ、理科の観察や実験をして『おもしろいなあ』と感じた、あの新鮮な気持ちを思い出したことです。
シロップ剤に見立てたカルピスやイチゴシロップをメートルグラスで測る時、まず表面張力の説明をしました。それを十分に理解して、正確な量を測ってくれた子どもたち。
錠剤に見立てたラムネ菓子1日3錠3日分を計算して、まちがわずにピッキングしてくれた子どもたちの真剣なまなざしは、私たちにとって感動的なものでした。
私たちにも、理科の実験を見て目を見張った初々しい時があったことを思い出させてくれ、さらには、薬剤師になりたいと思った大昔の自分に再会させてくれた子ども薬剤師たちに、感謝です。
次に、職場内の雰囲気がさらに良くなったことです。
子ども薬剤師体験開催という目標に向かって、みんなが意見を出し合い、話し合い、協力し、次にどうしたらよいかを一緒に考えるうちに、仲間同士の結束が強くなりました。もともと、みんな仲が良い薬局ではありましたが、さらに団結力がアップしました。
みんなで協力し合って、子ども薬剤師を迎え入れました。
お互いのコミュニケーションが円滑にできる、ということは、実は調剤過誤防止にも、とても役立っているのです。協力し合えないと、思わぬミスにつながることもあるからです。意志の疎通がうまくいくことは、薬局にとって、とても大切なことなのです。
3番目は、子ども薬剤師体験に参加して下さった患者さんたち(大人とも子供とも)と、より親しい関係が築けたということです。
体験を共有することにより、今までの関係よりもっと気楽に話ができ、コミュニケーションがうまく取れるようになったことを実感しました。
また、薬局内に掲示してある 『第1回 子ども薬剤師体験 写真集』 を多くの方が見てくださり、そこからも話題が広がっていってもいます。
次は、私もやってみたいという中学生。
子どもさんが「将来は薬剤師になりたい」と言っていると教えてくださるお母さん。
次回、11月10日開催予定の『第2回 子ども薬剤師体験』には、ぜひ参加したいと申込書を持って帰る方々。
今までの投薬だけの関係より、もっと近い関係になった方が増えてきました。
これこそ、地域の薬局として、薬に関する相談に乗るだけではなく、さらに薬以外の健康に関する相談もしてみようと、気軽に薬局に立ち寄っていただける薬局(国が目標とし、薦めている『健康サポート薬局』)への第一歩ではないか、と思ったのでした。
この患者さんと薬局とのつながりが、もっと広がっていけば、街の薬局として、理想の形になっていくのでは、と期待している私です。
最後に、「患者さんの立場から考えること」の大切さを、再確認したということです。
子ども薬剤師たちに注がれる、親御さんたちの温かく優しく、そして熱い視線。
私たちは、こんなに大切なお子さんたちの薬を調剤し、投薬しているのだ、という責任の重さに、改めて気づかされたのです。
それは、もちろん子供さんたちだけに限らず、すべての患者さんに対して共通することであることは言うまでもありません。
今までだって、私たちは、いつも注意に注意を重ね、自分の持っている能力のすべてを出しながら、懸命に仕事をしていたのはもちろんのことです。
しかし、日頃の仕事に慣れてしまい、
「もし、自分が患者の立場だったら」
「もし、自分の家族が患者の立場だったら」
という気持ちが、薄れてきてはいなかっただろうか、と反省したのでした。
患者さんの立場になって考えることの大切さ。
私たちは大事な命を預かる仕事をしているのだということを、改めて感じ、薬剤師の原点に立ち返る、というとても大切なことを思い出させてくれました。
ふだんの『患者さんと薬剤師』という立場とはちょっと違った今回の体験。
私たちにも、思いがけない収穫をもたらしてくれた、素晴らしい体験となりました。
参加してくれた子ども薬剤師のみなさん、ご家族のみなさん、本当にありがとうございました。
『子ども薬剤師体験』
~~~子供たちに教えられる(1)~~~
8月4日。
島田中央薬局で、『子ども薬剤師体験』 のイベントが行われました。
対象は小学生。
6人定員の予定でしたが10人もの応募があり、せっかく応募して下さったのだからと、全員に参加してもらうことにしました。
なぜ、私たちが 『子ども薬剤師体験』 を企画したのでしょうか。
それは子供たちに、
① 薬は、どのような手順を経て、患者さんに渡るのか?
② 薬局で薬をもらうまで、時間がかかることがあるのは、なぜなのか?
③ 薬が患者さんの手に渡るまで、薬剤師はどのようなことに気をつけながら、薬を調剤するのか?
などを知ってもらいたい、という気持ちからでした。
そして、実際に小学生たちに薬剤師の仕事を体験してもらうことにより、薬剤師の仕事、薬局の存在価値、ひいては医療の世界に興味を持ってもらえたらうれしいな、と考えたからです。
開始時間前には、ぞくぞくと 『子ども薬剤師』 の小学生たちと、保護者の皆さんが集まってきてくれました。我々スタッフも含めて、みんな少し緊張していましたが、期待が入り混じった、とてもいい感じの緊張感でした。
まず、白衣に着替えてから、本格的な手指の洗浄をしてもらいました。
小学生の白衣姿は、かわいらしくも、またりりしいものでした。
調剤の前に、薬局で薬を受け取るまでの流れを説明。みんな、真剣です。
いよいよ、年齢別に、A・B・Cチームに分かれて、調剤開始。
まず、お姉さんグループのAチーム(5、6年生)は、散剤の分包から。
真ん中のBチーム(3、4年生)の錠剤の調剤の様子。
一番小さいCチーム(2年生)は、薬に見立てたイチゴシロップをメートルグラスで測りました。
メニスカス(表面張力)も習ったんですよ。
メートルグラスで、きちんと20mlを測ることができ、子どもさんたちの能力の高さに驚きました。
それぞれのグループで、各2種類ずつ(水剤+錠剤、錠剤+散剤など)を調剤しました。
みんなの真剣なまなざしに、担当した薬剤師たちも、感動しました。
次は、保護者の親御さんたちに、子ども薬剤師から服薬指導をしました。
服薬指導の順番を待つ子ども薬剤師たち。
みんな上手に薬の説明をしてくれました。
これには、親御さんも担当薬剤師も、思わず拍手。
最後に全員で記念撮影。
参加者のアンケートから、子ども薬剤師たちの感想の抜粋です。
*薬剤師のことが良くわかりすごく楽しかったです。
*良い経験でした。くすりを作るのは大変だと思いました。
*薬剤師さんがやっている工夫や薬の作り方が楽しかった。
私たちがこのイベントを企画した意図を、十二分に理解してくれた感想がうれしかったです。
また、10人とも「同じイベントがあれば参加したい」という、うれしい結果も出ました。
参加してくれた子どもさんや親御さんも、大変満足して下さったイベントで、初めての『子ども薬剤師体験』としては、大成功だったと思います。
意外な副産物として、企画した私たち自身にも、良い影響があったことです。
それについては、次回。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(7)
~~~腎機能を聞くことが普及してきた~~~
インフルエンザや花粉症の繁忙期が続き、コラムを書く時間がなかったのですが、ようやく再開することができました。
その間、約半年。
半年の間に、実感したことがあります。患者さんに腎機能を聞くことが、どこの薬局でもよく行われようになってきた、ということです。
はなみずき薬局の各店舗でも、CKD患者さんの処方に対して、ドクターに疑義をかけて、
① H2-ブロッカー⇒PPI(プロトンポンプインヒビター)
② ザイザル⇒ロラタジン
③ セレコックス・ロキソプロフェン・ジクロフェナク⇒カロナール
④ バラシクロビル⇒減量 あるいは アメナリーフへの変更
⑤ アロプリノール⇒減量
など、変更がありました。
薬局で腎機能を聞くことは、患者さんの健康を守るためには必須のこと。
それが、広く行われるようになってきたのは当然のことですが、とてもいい傾向だと思います。
さて、腎機能の指標となる値は複数あります。
クレアチニンから計算
① 体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m³)
② 体表面積 eGFR(ml/min)
③ CCr(CG式)(ml/min/1.73m³)
④ 体表面積未補正CCr(ml/min)
Cys-Cから計算(シスタチン値計測は、まだ開業医では一般的でない)
⑤ eGFRcys(mL/min/1.73m³)
⑥ 体表面積未補正eGFRcys(ml/min)
この値のどれを使うのか?
例えば、身長151cm、体重51kg、年齢63歳、血清クレアチニン0.61の女性の腎機能値を、日本腎臓病薬物療法学会のサイトで計算すると、
① 体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m³) ⇒75
② 体表面積 eGFR(ml/min) ⇒63
③ CCr(CG式)(ml/min/1.73m³) ⇒90
④ 体表面積未補正CCr(ml/min) ⇒76
と値の乖離があります。
このサイトでは、「薬剤を投与する際、(②の)体表面積を補正しないeGFRで評価してください」とのコメントがあります。
医療機関の血液検査値で示されるのは、血清クレアチニン値と①の体表面積補正eGFR(mL/min/1.73m³)がほとんどです。
どれを使ったらいいのか、悩みます。
2018年10月20・21日に第12回日本腎臓病薬物療法学会学術集会が、アクトシティ浜松で開催されます。
そこで、さらに勉強してこようと思っています。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(6)
~~~ザイザルの場合~~~
もうじき90歳になるDさん。いつも控えめで穏やかな女性で、皮膚科のご自分の処方に軟膏の混合があるのを気にされて「いつもお手間をかけて悪いですね」とおっしゃるような方です。
Dさんは、皮膚のかゆみで、ずっとザイザルを服用されていました。
私たちは、毎回、半ば習慣のように「ザイザルを飲んでいて、眠気はありませんか?」とお聞きしていました。それまでの薬歴を見ても、「ザイザルでの眠気なし」との記載が続いていました。
しかし、ある時、Dさんが初めて「少し眠くなります」とおっしゃったのです。
遠慮がちなDさんが「眠い」と言うのだから、かなりの眠気と推測されました。
時間に沿って、以下に経過を記します。
201X.7.22 ザイザルによる眠気なし(※今までもずっと眠気の訴えはなかった)
内科の医師から腎機能が低下していると言われたことはない
★「ザイザルは、腎機能によって投与量を調節する調節する必要があるため、血液検査の結果があったら、こちらに持参してください」と依頼
腎機能については90歳であれば、低下している可能性は大なので、念のために依頼した
201X.8.5 ザイザルによる眠気なし
腎機能については、内科の医師から「少しは落ちてはいるが、年齢的なものもあるので、心配ないと言われた」とのこと
★血液検査の結果は、次回持ってきてくれる予定
201X.8.23 6/27の検査結果持参
CRE:0.86 ⇒ (計算すると)eGFR:47 CCr:35
Dさんに (1)腎臓の機能が少し落ちていること (2)その場合、眠気がでやすくなる場合があることを伝えた ⇒ そこで初めて、Dさんより「少し眠くなる」との訴えあり
★担当医に疑義照会
問い合わせ内容:CCrが35 ザイザルはCKD時減量となるが、5mg1Tを毎日服用でいいか? 本人からも眠気の報告あり
(ザイザルの添付文書には、CKD患者の用法・用量の記載があるので、一緒にFAX)
医師からの回答:ザイザルからロラタジン10mgに変更
ロラタジンは腎機能にかかわらずに用量調節がいらない薬(慎重投与ではある)です。すぐさま、ロラタジンに変更の指示をくれたドクターの早業に、感心しました。
ザイザルを減量の場合、DさんのCCr値では『1回2.5mgを2日に1回』と、とても煩雑な飲み方になってしまいます。90歳になろうとするDさんには、1日1回1錠ですむロラタジンがあっています。
ロラタジンが効きますように、眠気が出ませんように、と思いながらロラタジンをDさんにお渡ししました。
その後、Dさんは、ロラタジンでの眠気なく、かゆみも落ち着いているとのことで、ホッとしました。
お年を召した方には、医師や薬剤師に気を使って副作用を言わない方もいらっしゃいます。もしかしたら、遠慮がちなDさんは「眠気がある」と言えば、処方医やこちらに、何か迷惑がかかると思っていて、今まで眠いと言わなかったのかもしれません。あるいは、急に腎機能が低下して、眠気を感じるようになったのかもしれません。
本当のところは、私には知ることはできませんでしたが、高齢者には、丹念に、しつこいくらいに腎機能を聞いて行くことの大切さを実感した出来事でした。
もし、Dさんがザイザルを継続して服用した場合、ザイザルの血中濃度半減期が延長してしまい、そのせいで、ふらつきやめまい、倦怠感などが起こったかもしれません。その副作用を未然に防げたことが、うれしかったです。
それ以降も、Dさんが来局されるたびに、Dさんの優しそうな顔を見て、私も幸せな気持ちになります。
キーワードである『ザイザル』『高齢者』から『腎機能低下の可能性』を予測して、その結果、Dさんに起こったかもしれない副作用を防ぐことができた、いい経験でした。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(5)
~~~バラシクロビルの場合~~~
腎機能に注意しなければいけないケースは、整形外科だけでなく他の科でもよくあり、今回からは、そのいろいろな実例を書いていきたいと思います。
新患のC(女性)さんは、帯状疱疹との診断で来局されました。
Rp1) バラシクロビル錠500mg 6錠 分3
Rp2) ロキソプロフェン錠60mg 1錠 10回分 疼痛時服用
問診票の既往症の欄に『糖尿病』の文字を見つけた私は、いつも通り「腎臓が悪いと言われたことはありませんか?」と質問しました。
「今まではそんなに悪くなかったのですが、最近悪くなったと言われました」とCさん。
検査は先日してその結果はご自宅にあるとのこと。
抗ウイルス薬もNsaidsも両方とも、CKD患者さんには要注意薬です。
「今日出ている薬は、両方とも腎臓の機能が落ちている時は、減らしたり違う薬に変えたりした方がいい薬です。血液検査の結果で、もしかしたら薬が変わるかもしれません。まず、ご自宅に戻って検査結果をファックスしてください。その結果で、どうしたらよいかを先生にご相談します」
と、Cさんに説明していったん自宅に戻ってもらい、自宅から検査結果をファックスしてもらいました。
送られてきた検査結果は、
CRE:1.2
この他、年齢・体重・年齢を換算式に入力。その結果でた値は、
Ccr : 44 eGFR:35 (中等度の腎機能低下)
この値では、以下のように変更しなければ副作用が強く出てしまう可能性がありました。
Rp1) バラシクロビル錠500mg 6錠 分3 ⇒ 4錠 分2(12時間毎)
★理由:腎機能低下では血中濃度が高く維持されてしまい、「アシクロビル脳症」と呼ばれる精神神経症状(興奮・振戦・幻覚・ミオクローヌスなど)が稀ではあるが発現することがあるため。バラシクロビルは、肝臓で代謝を受けてアシクロビルになるアシクロビルのプロドラッグ。アシクロビルより経口投与での吸収率が高く、CKD患者において精神神経症状が発現しやすいと推察されている。
Rp2) ロキソプロフェン錠60mg1錠⇒カロナール200mg2錠 屯用
★理由:Nsaidsは腎血流を低下させ、さらなる腎機能障害を引き起こす可能性がある。CKD患者への解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンが第一選択となる。
以上を、ドクターに伝えて指示を仰ぎました。ドクターはさっそく処方の変更
をしてくださり、変更した薬を無事に患者さんの自宅に届けることができました。
バラシクロビルは、初回分はできるだけ早く服用してもらいたい薬なので、迅速なドクターとの連携が必要なケースでしたが、できうる限りの早さで患者さんにお届けできたと思います。
追記:2017.7に腎機能による用量調節がいらない抗ヘルペスウイルス薬「アメナリーフ錠」が発売となりました。
アメナリーフ錠は、主に糞中に排泄されるため、腎機能による薬物動態への影響が小さく、Ccrに応じた投与量設定の必要性がないからだそうです。
用法も1日1回とのこと。
これから、抗ヘルペスウィルス薬は何が主流になっていくのか、興味津々です。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(4)
~~~患者の腎機能を調べるのは薬剤師初級コース?~~~
今回は、少し違う視点から、腎機能と薬剤師について書いてみたいと思います。
私の高校時代の同級生で薬剤師になり、今でも交流のある友人たちが二人います。彼女たちはとても優秀で、トップレベルの薬剤師だと私は思っています。
先日、その中のひとりと久しぶりに会った時、「最近、(仕事で)何をがんばっているの?」と聞かれました。「患者さんに腎機能を聞いて、投与量をDrに提案すること」と答えると、「それはいいね。一番、薬剤師が(患者さんのために)始めやすいことだからね」と言われ、私は軽い衝撃を受けました。
「始めやすいこと=初級コース」と言うことが、すぐにわかったからです。
大学を出てから、病院では医者とも対等に話ができるほど研鑽を積み、調剤薬局に移ってからも、レベルの高い仕事をしてきた彼女からしたら、腎機能別に薬剤量を提案するなど当然のことだったのですね。
私とのあまりのレベルの違いに、唖然としたのはもちろんですが、妙にほっとし、うれしく思ったのも事実です。それに、彼女は決して私を下に見て、そういう反応をしたのではないことは、よくわかりました。
ああ、こういうことをやっている人は、昔からきちんとやっているんだ。
私のやっていることは、彼女に比べたらずいぶんと遅れているのかもしれないけれど、5、6年前、調剤薬局ではあまりやっていなかったことを、一人でやり始めたのはそれなりに意味があったのではないか・・・。
むしろ『こんなレベルの高い薬剤師が、私の身近にいる』ことに頼もしさを感じ、『私のしてきたことは、意味のあることだったのだ』と改めて思えたのでした。
いつも、目標にできる薬剤師がいるということは、とても幸運なこと。
自分の足りない部分を教えてくれる存在は必要です。
薬剤師も努力を怠っていると、あっという間に役に立たない古い薬剤師になってしまいます。それを防ぐためには、新しい知識を得る努力は欠かせないと思います。そのために、勉強会に出席したり、学会に出たり、本を読んだり、日々の努力を重ねていくしかないのですね。
経験に胡坐をかいているうちに、いつの間にか古いだけの薬剤師になってしまった、などということのないように、といつも自戒しています。
追記:大きな病院で働いている若い薬剤師と話をした時も「学生時代に腎機能別の薬剤量を一覧にまとめたことがあった」と聞きました。この時も、時代遅れにならないように勉強しなくては、との思いを新たにしました。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(3)
~~~アロプリノールの場合~~~
Bさんは、大(おお)先生(80代)のご友人の男性(やはり80代)。その医院では、ほとんどの患者さんはご子息の院長が受け持ち、Bさんは大先生が診察をされている数少ない患者さんの一人でした。
Bさんは内科にもかかっていて、血液検査の結果を持参してもらうように頼んでいました。持参した血液検査の結果から腎機能を計算すると、かなり重度の腎機能障害で、CCrが30を切っていました。
高尿酸血症でアロプリノールを100mg2錠分2で服用していたため、さっそく『日本腎臓学会編 CKD診療ガイド2012』で調べたところ、Ccr50以下では1日1回50~100mg。
※(2016.6に発行された『腎機能別薬剤投与量 POCKETBOOK(株式会社じほう)』では、1日1回50mg。しかも、この量では適正な尿酸値にコントロールできない場合が多い、との記載あり)
Bさんに「腎機能低下があるので、アロプリノールをこのままの量で服用するのは多すぎると思われます、大先生に連絡してどうしたらよいか聞いてみます」と伝えました。
すると、Bさんは目の前で突然携帯電話を取り出し、直接大先生と話しだし「薬剤師さんと代わるから」と私に電話を差し出しました。
大先生はカリスマ的存在で威厳に満ちた方との噂を聞いていましたし、まだ一度も話をした事がありませんでした。面識もない一薬剤師の話を聞いてくださるのでしょうか?
しかし、ここは覚悟を決めて事情を話すしかありません。
必死に検査結果や代替薬の提案について話す私に、大先生は「では、その薬に変えましょう」と優しく言ってくれました。ホッとしました。
代替薬はフェブリク10mg。腎機能障害があっても比較的使いやすいと言われる薬です。
腎機能低下群では「AUC(血中薬物濃度時間曲線下面積)の上昇があるため、20mgを超える場合には慎重に観察」という縛りはありますが、10mgから開始して様子を見ることになりました。
フェブリクに変更後も、Bさんの尿酸値は安定し、そのままフェブリク10mgを継続することになりました。
これをきっかけに、Bさんは私をとても頼って下さるようになりました。また、「○○君(大先生のこと)が、薬のことはAに任せておけば安心だよ、と言ってるよ」と教えてくれ、薬剤師としてうれしかったことを覚えています。
つい最近まで、調剤薬局の一薬剤師が腎機能に応じて薬の量を医師に提案する、ということはまだまだ少なかったと思います。
怒られることを覚悟でドキドキしながら大先生と話し、大先生にこちらの提案を受け入れてもらえたことは、私にとっても一つの前進となりました。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(2)
~~~ロキソニンの場合~~~
70代の女性患者のAさんは、腰痛で初めて来局されました。痛みが激しく、一人では歩けず、ご主人に付き添ってもらっての来局でした。
出された薬は、Nsaidsの『ロキソニン錠』。
お薬手帳を調べると糖尿病の治療中で、糖尿病薬をいくつか服用されていました。
糖尿病だと腎機能が低下している場合が多いので、ご本人に「腎臓が悪いと言われたことはありませんか?」と尋ねると「ないです」と即答。
しかし、併用薬の中に『アーガメイトゼリー』がありました。『アーガメイトゼリー』の適応症は「急性及び慢性腎不全に伴う高K血症」。
腎機能低下はあるに違いありません。
何か手がかりはないかと思い「血液検査結果の紙など、お持ちではないでしょうか?」と聞くと、偶然にも内科の最近の血液検査の紙をお持ちでした。さっそく、クレアチニン値(CRE)と身長・体重・年齢からクレアチニンクリアランス(CCr)を計算したところ、重度の腎機能障害であることがわかりました。
前回も書いたように、痛み止め(Nsaids)は腎血流を低下させ、さらに腎機能を低下させる可能性がある薬剤です。
すぐに、整形外科のドクターに連絡をして、腎機能障害があっても使いやすいアセトアミノフェンへの変更を提案しました。
正直、アセトアミノフェンでこの痛みに効くのかなぁ?と思いましたが、ドクターがそれで行こうとのことだったので、その通りに調剤。
次にその患者さんがいらした時に「痛み、かなり良くなりました」と言われてほっとしたのを覚えています。
このように、肝臓や糖尿病の値は気にしても、腎臓の値はあまり気にしていないし、医者からも言われたことがない、という人が実に多いのです。
でも、一番気にしてほしい検査値は腎機能の値だと、私は思います。
特に整形外科の場合、痛みどめは頻繁にでますし、ドクターもいちいち腎機能を聞かない場合もあると想像されます。
だから、薬局は整形外科と他の科とのつなぎ役になり、患者さんの腎機能をチェックし、それを整形外科医に伝えるのが大切だと私は思いました。
このチェックができるのは、調剤薬局の薬剤師しかいないですよね。
以後も、腎機能に応じての薬の量や変更で、患者さんの副作用やさらなる腎機能低下を防止できたのではないかと思う、いくつかの例をご紹介していきたいと思います。
※CRE値からCCrを計算するのには、日本腎臓学会薬物療法学会をはじめとしていろいろなサイトがあり、必要な値を入力すると簡単にCCrや推算糸球体濾過量(eGFR)が算出される。
追記:近年、様々な研究成果により、アセトアミノフェンはNsaidsとは明らかに異なった解熱鎮痛薬であることが示されている。
臨床の現場では、CKD患者には、解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンが優先的に使用され「アセトアミノフェンは効果のマイルドな痛み止め」という認識も変わりつつある。
さらには『アセトアミノフェンには、むしろ腎保護効果も得られる』という可能性も見出されてきている。
腎臓が悪いと言われたことはないですか?(1)
~~~腎機能をさらに突っ込んで聞くことの大切さ~~~
今から5~6年以上も前、整形外科の近くの薬局に勤めていた時のことです。
整形外科では、痛みどめの薬がたくさん処方されます。
薬の中には、腎機能に応じて適切に使わないと、有害反応を発症するものがあります。痛みどめもその中の一つ。
痛みどめ(Nsaids)はプロスタグランジン(PG)の合成を阻害することにより優れた解熱鎮痛作用を有しますが、PGの低下から腎血流が悪くなり、そのせいでさらに腎機能が低下してしまうという場合があるのです。
なので、Nsaidsの添付文書には『重篤な腎機能障害のある患者には禁忌』との記載があります。
では、『重篤な腎機能障害』とはいったい何なのか?
何をもって重篤とするのか?
新しい薬の『リリカ』や『トラムセット』などには、きちんと腎機能に応じた投与量が添付文書に記載されていますが、具体的な数字はNsaidsでもそれ以外の薬でも、添付文書には記載がない物がほとんどなのです。
そのころ、患者さんに「腎臓が悪い時と言われたことはないですか?」と確認すると、ほとんどの患者さんは「ないです」と答えていました。
はっきりと慢性腎臓病(CKD)と分かっている患者さんは別として、「ない」と答えた患者さんには、それ以上突っ込まなくても問診としてはそれでOK。ややこしいことをしなくてもいい、という逃げの気持ちがあったのは事実です。
しかし、毎日毎日、多くのNsaidsを投薬しているうちに、漫然と調剤するだけではいけないのではないか?
もっと、踏み込んだ投薬をしなくてはいけないのではないか?という気持ちが強くなってきました。
では、実際にどうしたらよいのか?
2012年に『日本腎臓学会編 CKD診療ガイド2012』(東京医学社)が発刊されました。この本には、CKDの定義、重症度分類、腎機能低下時の薬剤投与量が書かれているのです。
特に、腎機能低下時の薬剤投与量が明記されていることは、調剤をするうえで大変助かります。CKDの疑いがある患者さんには、血液検査結果をできるだけ聞くことにしました。
次回からは、実際の例をあげながら、血液検査の値を聞いてどのように投薬に活かしたか、を書いていきたいと思います。